cococaRaのココピートを使っている生産者は、どのような方でしょうか?またどのような思いで営農し、どのような経緯でcococaRa製品を使っているのでしょうか?
今回は2019年にcococaRaのココスラブを導入した、静岡県浜松市の『いちご観光農園Shimonta』代表取締役社長であり、農園長の田邉剛さんにお話を伺いました。

いちご狩りで就農した決め手は『安心して食べてもらえる施設を作りたい』
実は田邊さんは、株式会社吉和田浜松という生産効率・省エネ・環境をテーマに機械やシステムの設計やメンテナンスを行っている商社の代表取締役社長でもあります。定年退職者の選択肢の一つとして農業があってもいいのではないかと考え、2011 年から就農の準備を始めました。
いちご栽培をしようと決意した理由を、田邉さんはこのように話します。
「色々と検討しましたが、この決断には当時幼かった子どもを連れて行ったいちご狩りでの出来事が影響しています。いちごの横にビスケットが置いてあるな、と思ったら殺鼠剤だったのです。注意喚起もなく、もし子どもが口に入れてしまったら怖いと感じました。この経験から『安心して食べていただける施設を作ろう』と、いちご栽培にたどり着いたわけです。」
いちご狩りは12月中旬から 5月上旬の約5ヵ月の間開園しており、年間で約1万人が来場しています。
「最大では、1日に700名も来場した日がありました。でも浜松市の人口は約 80万人ですので、年間1万人はその1%程度と考えると、もっと多くの方にお越しいただく努力をしないといけません。」
『農業の企業参入』成功の秘訣は、企業のマインドも忘れないこと
『企業が農業に参入した』と聞くと、懐疑的な見方をする方もいるかもしれません。しかし田邉さんは、まず構想を練り、情報収集した後、1年半、浜松市内にあるいちご狩り生産者で自ら修行しました。さらにその後1年間は、ハウスを借りて一人で栽培をして「本当にやれるのか?」と検証し、2016年にいちご農園Shimontaの開園に至りました。社長自ら栽培とマーケティングの中心に立って、トライ&エラーを繰り返しています。
田邉さんは、生産者として「消費者においしいいちごを、安心して食べてもらいたい!」という熱い思いを持っています。それだけではなく、企業の代表としてビジネス視点で栽培や経営分析・解析を行い改善を重ねる企業のマインドも持ち合わせ、また資材商社で培ったノウハウで、栽培方法の確立のため仮説と検証を繰り返して改善しようとしています。これらの融合が、魅力ある農園を作っています。
出荷メインのいちご生産者といちご狩り生産者の違い
Shimontaの栽培品種は、静岡県育種品種の『章姫』『紅ほっぺ』『きらぴ香』の3品種と、『もういっこ』『桃薫』の合計5品種栽培しています。さらに今作は、『星の煌めき』の試験栽培も実施しています。このように品種のラインナップは、今作のものであり、毎年何らかの新しい品種を栽培し、味と収量を検証しながら、品種の変更を続けています。

「出荷メインのいちご生産者と、私たちのようないちご狩り生産者では、作り方も収穫するピークの時期も違います。」
一般的に出荷メインのいちご生産者は、最も高値で販売ができるクリスマスに合わせて収穫ができ、また収量を上げてできるだけ多く出荷できるように努めています。そのため品種も珍しすぎるものや、多品種栽培はあまり多くありません。
一方でいちご狩り生産者の収穫ピークは、2月下旬から3月上旬です。また来場者に完熟で食べてもらうことを目指して栽培の調整をし、多品種栽培をすることも一般的です。
ジェラートはフードロス対策と、夏場の収入補償
Shimontaでは、農園内で自家製ジェラートの販売もしています。この構想はいつ生まれたのでしょうか?田邉さんは、浜松市内のいちご狩り生産者での研修中に、廃棄されるいちごの量に驚き、もったいないという気持ちから、利用方法を考え始めました。またもや自ら夜間学校に通い、製菓衛生師の免許を取得し、加工品の製造・販売ができる体制を整えました。


「思案しましたが、ジェラートはお菓子に近いし、いちごは夏場に収入がないので、夏場の売り上げになればいいな、という思いがありました。」
栽培上の目標は『お客さんを驚かせること』
田邉さんの栽培目標は、来訪者がハウスに入った時に、『いちごの香りがする』『たくさんある』と驚かせることです。そのためにさまざまな取り組みをしています。例えば大きいいちごを作るために、花芽の数を調整しています。甘さが乗るためには光合成が必要なので、苗同士の幅を広く取っています。


「出荷専門の方だと、12〜15センチですが、うちは20〜25センチ取っています。通常は3本定植できるスペースに2本といったところです。いちご狩りですので、収量より味を求めて定植しています。」
農園のコンセプトは『環境配慮』
母体となる株式会社吉和田浜松が、生産効率・省エネ・環境をテーマしていることもあり、農園のコンセプトも『環境配慮』です。


具体的に導入している資材や機械の例を挙げると、新設した施設に導入した暖房の排気を利用して二酸化炭素を生成する『CO2貯留・供給装置』です。二酸化炭素ガスの発生装置は、光合成の促進のために有益ですが、ボイラーを焚きながら、二酸化炭素を作る装置を設置することに矛盾を感じたと話します。
その他にも、開花後に農薬散布の代わりに、湿度制御をするミスト装置に病院でも使用される消毒剤を混ぜて噴霧しています。これはうどん粉病、炭疽病、灰色かび病の対策です。保温のための二重カーテンや、害虫対策としてデンプン材も使用しています。
これらは今までのネットワークや、これまでの調査から得られた知識で見つけ、導入しましたが、田邉さんを最も悩ませたのは『ココピート培地』でした。
内部がヘドロのようになるココピート培地に困窮
田邉さんは、2016年の開園当初から『環境配慮』のコンセプト通り、ココピート培地を導入していました。というのも、廃棄方法が土にすき込めばよいので、環境配慮というキーワードに合っていると思ったからです。当初導入したココピート培地は、ハウス建築時に業者に依頼したものでした。
「いざ栽培を開始したら、水はけも悪くて、崩れやすい。表層部はいいのですが、内部がヘドロのようになってしまって。水をかけても膨らまないし。当初からよくないとわかっていましたが、入れてしまったので使い続けていました。」
しかし2作目になると、内部が泥のようになり、そこが目詰まりし、根腐れを起こし、病気になるという悪循環を繰り返しました。さらに病気の発生がひどくなったため、2018年に建設した新しいハウスには、開園当初とは違うメーカーのココピートを導入しました。
「でもこれも、水はけが悪い。私が理想とする水分状態にはならなかったのです。」
安いココピート培地を選んだら、結局高くついた
色々検討する中で2018年にcococaRaのココピート製品を、試験的に使い始めました。
「補充用のため小ロットだったのですが、これが非常に良かった!これだったらいいな、と2019年には2016年に建設した2棟のハウスの入れ替えを行ってcococaRaのココスラブを導入しました。カスタマイズはせず、スタンダードで使用しています。」
「一作目ですし、また生育状態は培地だけでは計れませんが、水分状態は満足しています。水はけもよく、膨らまないという問題もない。長く使っていけるなと感じています。」


実は田邉さんは、開園当初の計画では、培地は5年ごとの入れ替えを想定していました。しかし蓋を開けてみると2016年に開園して、2019年のわずか3年で培地を変えることになってしまったのです。
「想定していなかった出費でした。安いものを選んだら、結局高くつきました。」
cococaRaココスラブ導入で変更したこと
cococaRa培地に変えたことで、管理方法や栽培方法など変更した点はあるのでしょうか?他社培地とcococaRa培地で、点滴チューブでの灌水や追肥に関しては、何も変わっていません。


しかし肥料の吸収効率をよくするために、cococaRaココスラブを導入する時に、微生物の菌を入れました。また使用している井戸水は鉄分が少ないので、今年から鉄分を施肥しています。しかしいずれも、培地を変えた理由での変更ではなく、よりよいいちごを作るために毎年試行錯誤をしている中での変更です。
cococaRa製品には満足している
最後にcococaRa製品の改善点や要望を聞きました。
「cococaRa製品には満足してますので、改善点はありません。強いていうなら、『粒が粗いココピートだけ』という製品があればいいな、と思っています。それを下に敷いて、今のココスラブと二層に分けて試してみたいなと思っています。より水はけが良くなるのかな、と。」
ありがとうございました!
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