ココカラのココピートでイチゴの養液栽培を使用する兵庫県淡路市の淡路島にあるGreenarium(以下、グリナリウム)は、今作からグローバッグ(TP2)を使用しています。
生産部マネージャー 地主守さんに、どのような経緯でココカラのココピートの使用を検討されたのか、またグリナウムについてのお話を伺いました。
年間3、4万人の観光客が訪れるグリナリウム
グリナリウムには、年間3〜4万人もの観光客がイチゴ狩りに訪れています。グリナリウムに到着すると、随所にお客さまに喜ばれる仕掛けと、安定した農業経営の双方を満たす工夫が見られます。
収量とおいしさのバランスで、お客様満足度を向上
グリナリウムでは、関西で人気の章姫や紅ほっぺの他、恋みのり、おいCベリー、よつぼし(試験栽培)など様々な品種を栽培しています。
品質と収量は基本的に反比例の関係ですが、多収と品質のバランスを取ることを心がけ、お客さんに価格と味の両方で喜んでもらいたいと考えています。例えば、兵庫県内のイチゴの平均収量は10a(アール)あたり4トン代ですが、グリナリウムでは6トン以上を目指しています。これは、収量が上がれば、お客さんが喜ぶ価格で提供が可能になるためです。さらに、品質を上げることでおいしさを追求しています。
あっと驚く、つり下げ式の栽培ベッドは、美しさと栽培条件を満たす仕組み
グリナリウムに足を踏み入れると、スペインから直接購入した「つり下げ式の栽培ベッド(ガター)」に目を奪われます。もちろんイチゴ狩りに訪れた人を魅了しています。
見た目だけでなく、栽培上管理をしやすくするためのカスタマイズもしています。例えば、スペインでは50cm間隔でベットをつり下げますが、グリナリウムでは70cmに設定しました。それは、イチゴの生育時期がスペインは日射量の多い夏期であるのに対し、日本はそれより少ない春と栽培条件が異なるためです。
ベッド数が少なければ、当然10aあたりの収量は落ちますが、十分な日射量を確保し、安定した作物を栽培することを優先し、最適な資材を導入しています。
「スペインから直接資材を購入することは、リスクを抱えるとも言えますが、そのリスクも加味して使っています。農業資材はただ安いからという理由だけではなく、長く付き合いたい会社や、信頼できる人がいるところから購入しています。」
ココカラのココピートに切り替えた理由は使用年数と排水性
グリナリウムでは、従来、ロックウールや他社ブランドのココピートを使用していましたが、いくつかの課題を解決するために、2020年9月からココカラのグローバッグ(TP2)に変更しました。その理由は何でしょうか。
ロックウールの廃棄コスト増加
ロックウールからココピートへの切替えを検討した理由は、ロックウール培地の廃棄コストです。地主さんによると、廃棄するためのコストが年々上がっており、1000㎡程度の圃場面積に必要な培地量を廃棄する場合には10万円ほどかかってしまいます。その点において、ココピートは使用後に畑にすき込んで処理ができるため、廃棄コストがかかりません。
底が粘土化していくココピート
他社ココピート培地からココカラココピートへの切替えを検討した理由は、使用年数です。グリナリウムで、以前使用していたココピート培地は、年月が経過するに従い、底が粘土のようになってしまいました。当初は同じ培地を3年間使用したいと考えていましたが、2年目の時点で収量が激減してしまい再使用を断念しました。
他社ブランドのココピート製品の中には、ECを下げ、かつ安価に販売するために、堆肥化している黒色のココピートを混合している場合があります。その結果、より早く腐植が進んでしまい、再利用ができないということが起こり得ます。
このような課題を抱える中で、地主さんは、ココピート培地の変更を検討し始めました。
ココピートのブランドの変更に当たり、地主さんがココピート培地に必要だと考えている条件は2つです。
- 3年間使用できること
- 排水性の良さ
ココピート培地で、排水性が不十分であることはリスクです。この2つの条件をクリアできると考え、ココカラのココピート培地の使用を決めました。
ココカラのココピートは一度跳ね返った後にゆっくり排水
「ココカラのココピートは、排水性がいいのですが、ただ水が抜け落ちていくのではなく、一度上に跳ね返った後に排水するイメージです。跳ね返った水が、夜間にかけてゆっくり下がっていくのが良いと思っています。」と、地主さんは話します。
イチゴは、培地の表層に根を張り、昼間は果実が肥大せず、夜間にかけて水を要する性質があります。そのため、日中に灌水した水が、そのまま上から下へと抜け落ちるだけだと、生育に寄与しない可能性があります。ココカラのココピートの特性だと、日中に灌水しても、果実が水分を要する時に水分を供給することができます。また、排水性も高いので根腐れなどは起こりにくいといえます。
ココピートのデメリットと言われる不安定性への対処方法
一般的には、有機質のココピート培地より、無機質のロックウール培地の方が栽培管理が容易だと言われています。
しかし、地主さんは、養液栽培で隔離培地を使用している場合においては、栽培者が技術を上げて灌水管理や施肥バランスをきとんと管理することで、有機物のココピート培地であっても、ロックウールと同様に比較的コントロールが可能だと言います。特に1年目については、施肥設計など肥料のバランスを工夫しています。
ココピートの気になる点にココカラ大原が回答
インタビューの中で、グリナリウムより頂いたココピートに関するご質問にココカラ大原が回答しました。
Q:灌水穴の指定は可能でしょうか?
グローバッグを一列に並べたときに、グローバッグ間も考慮して、均一な株間を計算して穴の位置を指定できるのでしょうか?
A:灌水穴の位置は指定できます
ココカラでは、グローバッグに開ける灌水穴の位置を指定していただけます。基本的には、イチゴのドリップ灌水の場合は10穴、トマトの場合は2穴程度です。
他メーカーのグローバッグは、生産者が自ら穴を開けて使用することが主流ですが、イチゴの場合は1バッグにつき10穴程度と多く、手間がかかります。また、灌水穴が少なく、ドリップ灌水を採用している場合、灌水量の差でココピート培地の腐植に差が出てしまう恐れがあります。
Q:グローバッグの膨潤は硝酸カルシウムを入れて待つだけですか?
ココピート培地を使用する前の膨潤方法について、硝酸カルシウムを入れて、真水を落としながら待っただけですが、問題ないですか?排水穴があるので、膨らまないと思っていましたが、きちんと膨らみました。
A:はい、大丈夫です
はい、そのままで大丈夫です。硝酸カルシウム水溶液を、設置したグローバッグに少しずつ入れて膨潤させてください。この状態のまま、最低48時間、理想は72時間放置してください。排水穴から出てくる水のEC濃度を計測しながら、地下水または水道水を使って洗い流して、ECが下がったら使用できます。排水穴があるため、「膨らまないのでは」とご質問を頂くことが多いのですが、きちんと膨らみます。
▼詳しい情報はバッファリングとはをご参照ください。
グリナウムのこれから。地下部にも意識を向ける
「植物の地上部は、環境制御により管理ができるようになってきました。今は、地下部をメインに考えています」
具体的には、みどりクラウドやTrutina、グロセンス(土壌水分量)、ガターウェイトなどを用いた培地重量の計測など、様々な客観的データを組み合わせています。これらのデータから、培地の温度や排水性、支根の動きから培地内の水の層を推測するなど地下部のモニタリングも試みています。
地主さんは、職人が美化されがちな農業界において、客観的なデータを活用しながら現実に落とし込んだ栽培技術を構築していくことが、技術継承につながると考えています。
会社名 | 株式会社 淡路の島菜園 / GREENARIUM awajishima |
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住所 | 兵庫県淡路市野島常盤1550-10 |
お話をお伺いした方 | 生産部マネージャー 地主 守さん |
公式ホームページ | https://www.greenarium.jp/ |
栽培作物 | イチゴ、トマト |
栽培時期 | イチゴ:9月〜6月 トマト:8月〜7月 |
栽培方法 | イチゴ:施設養液栽培、つり下げ式の栽培ベッド(ガター) トマト:施設養液栽培、隔離ベッド |
導入製品 | イチゴ:ココカラグローバッグ(TP3) トマト:ロックウール |
規模 | イチゴ:1.2ha トマト:0.5ha |
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