株式会社ジンボ・アグリアート・モダニズムの代表、神保謙太郎さんは、栃木県小山市でトマトを栽培する若手就農者です。神保さんは、自社のトマトをとちとまとして商品化し、地元のレストランや東京のスーパーなどを通して販売しています。
引用元:とちとま公式ホームページ
神保さんは、市場出荷から、小売店などへの直接販売に切り替えたというご経験の持ち主です。トマトの魅力をホームページなどでもアピールし、着実に自社のファンを増やしている神保さんに、お話を伺いました。
新規就農当時から感じたトマト栽培の変化
神保さんは、17年前に就農し、栃木県小山市でトマト栽培をはじめました。
研修が終わり、就農するときには、「トマト栽培には未来があって光り輝く世界のように見えていました。」と神保さんは言います。
就農当時のトマト栽培は、軒が高いハウスで「土耕での長期多段どり栽培」が始まったばかりというタイミング。
トマト生産者はこぞって、新たな栽培技術の確立を目指しており、手探り状態で、試行錯誤しながら栽培に取り組んでいました。当時は、長期で収穫できる作型が殆どなく、高い販売単価を維持できました。
その後、新規トマト就農数の増加や、施設や栽培技術向上に伴い、トマト栽培全体で、高い収量を長期で収穫できるようになってきました。それに伴い、JAを通じて市場へ出荷をする中で、需要と供給のバランスから販売価格に影響が出てしまう場面もありました。
単価安に直面、「このままではいけない。」
当時JAの部会に所属していた神保さんですが、当時の単価に納得できず、共販出荷から直販へ転向することを心に決めます。部会に所属しながら3 年ほどかけて直販への切り替え準備を進めました。
しかしながら、神保さんがいざ直販に取り組もうとするとこれまでと違い、「自分のトマトの特徴や個性を伝える方法がわからない」という課題があることに気がつきました。
それまでJAの部会で販売している時には、「高い収量を目指すこと」に主に注力していたのですが、直販に切り替える決心をすると同時に「自分で売るとはどういうことなのか」ということを考え始めます。そうなると、「今までと同じ品種でいけるのか?」など商品の魅力についてもしばらくの間は毎日のように自問する日々を送りました。
初心にかえり商品としてのトマトの見直しからスタートをすることに決め、市場調査として、まずはバイヤーに会い、小売店のトマト売場へ通い始めました。市場調査を進める中で、神保さんが重視しようと心に決めたことが2つありました。1つ目は、8割の人が美味しいと思う品種を選ぶこと、2つ目は、美味しさを担保しながらも最大限の収量を上げ、単価をキープするということでした。
活動スタートから3年間は、自らスーパーマーケットへ出向き、試食販売会を実施しました。その中で、消費者の反応を観察したり、スーパーの売場担当と繋がり、消費者ニーズや好みなど定期的に情報交換を重ねたりできたことで、神保さんは理想のトマトのイメージを固めていきました。
そうした中、信頼関係ができた地域小売店の間で、神保さんの思いやトマトづくりの噂が広まっていきました。神保さんの真摯な姿勢の営業力で新しくお取り引き先とも繋がっていき、販路の拡大は順調に進みました。現在、神保さんの場合は出荷時の事務作業コストなど差し引いても、市場に出荷していた時より利益率が向上しています。
顧客視点へ寄り添い「栽培の安定性」を担保していく立場へ
市場価格の変動に左右されないことが強みである直販の挑戦ですが、神保さんがベースに敷いたのは、小売店、消費者、生産者三方よしのバランスを模索し続けることです。生産者の立場としては、小売店にきちんと納品し、消費者にいつでも美味しいトマトを手に取っていただけることを目指しています。
特に、市場への出荷時と直販をする場合では、雇用数や人の配置方法には工夫しました。自社で選果やパッケージング、配送作業を自社で担うと、共販出荷時に比べた作業コストは増えるため、必要な従業員数も増えます。現在、神保さんの運営するジンボ・アグリアート・モダニズムでは、選果専任者も含めて常時20名ほど在籍し、直販体制を支えています。また、販売先の利益も守らなくてはならなくなるという意識を持ちました。生産者から届く農産物のための売場スペースに、売り物が並ばないという状況になると、小売点へ多大な迷惑をかけてしまうからです。
「直販を考えた時に、まずはきちんと栽培していくことが大切です。そうなって、はじめて直販という土俵に立てます。」
しかし、加えて神保さんはこう言います。「最終的には、消費者が手に取るか、取らないかです。小売店の棚を空けないことが重要ですが、収量を上げることだけを目標にしてしまうと、直販ではうまくいきません。直販は、そんなにシンプルで簡単なことではないので、栽培と販売のバランスについて試行錯誤を続けています。」
直販体制を維持していくための課題
直販の体制を継続するにあたり、神保さんが課題としていることもあります。直販であっても、市場価格の相場にまったく左右されないということはありません。ジンボ・アグリアート・モダニズムでは、自社トマト「とちとま」の人気もあり、販売先総数は約100店舗に販売していますが、市場にトマトが溢れている時期は、販売単価を下げずに売り切る戦略も考えなくてはなりません。そのため、今後は希望小売価格の設定も視野に入れています。
一方、トマトが十分に供給されない時期の課題としては、どこの小売店からもニーズが高くなっていて、平等に売りわけをすることが難しいと感じています。そのため、端境期の十分な納品にお応えするべく、ハウス増設の計画を立てています。
輝く未来、ブランド確立のためのイメージ戦略へも意欲
「今後は会社のイメージに惹かれていくような取り組みをしていきたい。」と今、神保さんは未来へ向けて目を輝かせています。
トマトの商品価値の向上だけではなく、新しいことに取り組み、魅力溢れる会社になることを目指しています。ハウスのデザインにもこだわり、センスを活かして、統一感ある世界観作りあげてきました。
最近では、イメージ戦略の一環として、会社の名前を「ジンファーム」から「ジンボ・アグリアート・モダニズム」へ変更しました。さらなる農業の可能性を引きだす神保さんは、今自らの手によって、トマト栽培の未来に輝きを作り出しています。
会社名 | 株式会社 ジンボ・アグリアート・モダニズム |
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生産地 | 栃木県小山市 |
お話をお伺いした方 | 代表取締役 最高生産管理責任者 神保謙太郎さん |
公式ホームページ | https://jin-farm.com/about-us/ |
栽培作物 | 大玉トマト、ミニトマト |
栽培時期 | 8月10日に定植から翌年7月10日まで収穫 |
栽培方法 | 養液栽培 |
導入製品 | ココカラグローバッグ(TP3) |
規模 | 3,000㎡ハウス2棟(計6,000㎡) ベッド数:65 |
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