施設園芸など養液栽培において、園芸培土(培地)は栽培の要の一つです。
培地の種類は多様で、その中でもココピート(注:cococaRaでの製品名はココカラピート)、ロックウール、ピートモスの3種がよく使われています。ここではココピートとロックウールの違いについて解説します。
ロックウールとは
玄武岩や天然岩石などを1500〜1600℃の高温で溶解した後、遠心分離により繊維状に固めた人工の鉱物繊維で、いわゆる人工/無機培地(培土)の一種です。また、工場施設やビルなど建築物の保温や防火・耐火材としても非常にポピュラーです。
無機培地としてのロックウールの最大の特徴は化学的に不活性である点です。培養液の組成にほとんど影響を与えないため、注入した養液や水が作物に直接的に影響を与えるので栽培管理がしやすいことが特長です。
ただし、水を与えすぎると過湿になるため排水対策をきちんと行う必要があります。特に非循環型においては、肥料成分が外部に放出され環境汚染につながることを懸念しなくてはいけません。
それゆえロックウールを使用する場合は、最先端の環境制御システムやドリップ灌漑システムなどで綿密かつ適正に管理をする必要があります。
加えて、ロックウールを使用する場合に最も課題になるのは使用後の処理方法です。
一般的な方法は、専門業者に委託して埋め立て処理をします。ただし、非常にコストがかかる上に、環境に配慮した方法とは言えません。委託の上リサイクルをする方法もありますが、こちらも運搬費を含めて高額です。また、近年都道府県によっては、委託の価格が上がっているところも多くあり、経営を圧迫する場合があります。
ロックウールを利用するメリット
①歴史が長い
1970年代後半からオランダを中心に普及し、日本には1980年代に導入されました。歴史が長いため、多くの実証実験や研究がされています。
②最適な環境を作ることができる
最大で90%の植物が吸収できる水を保持できるので、細かい栽培管理をすれば、気候や植物に合わせて最適な環境を作ることができます。
③均一性が高い
無機培地のため、肥料が吸着しません。そのため、スラブが飽和している時の潅水の組成と、スラブ内また初期の排液の組成が安定します。
ロックウールのデメリット
ロックウール栽培の最大のデメリットは、使用後の廃棄処理です。
一般的には、専門業者に委託して埋め立て処理をしますが、非常にコストがかかる上に、環境に配慮した方法とはいえません。
委託をしてリサイクルも可能ですが、運搬費を含めて高額になります。近年、更に委託費用が上がっている地域もあります。
ココピート(ヤシ殻培地)とは
ココヤシのハスク(中果皮:ココナッツの殻の内皮にある繊維や粒)を原材料として、0.1〜10mmに粉砕した粒を利用した有機培土です。
主な生産国はインドやスリランカで、有機質100%であること、高い保水性を持つことから、多くの国で使用されています。もともとマットやロープなどのヤシ殻製品を作る際に捨てていた部分を活用・加工しているので、原材料の調達方法も地球にやさしいことが大きなメリットになります。
地球環境保護への関心が高まる中、産業廃棄物であるロックウールや土地を掘り起こして採取しているピートモスに代わる環境配慮型の土壌改良材として、ヨーロッパやアメリカを中心に普及が進んでいます。
ココピートを使用するメリット
①使用後の廃棄処分が容易でサステナブル
ココピートは100%有機培土のため、畑にすき込んで土壌改良剤として再利用ができます(堆肥にして販売している方もいます)。
②比較的安価
廃棄処分に関しても、一般廃棄物扱いになり、産業廃棄物として処分する必要のあるロックウールより比較的安価に処分ができます。畑に漉き込めば、廃棄コストは無料です。
③同じ培地を複数年使用できる
培土を補充すれば5年以上、しない場合でも通常2年間は同じ培地を使用できます。
④環境にやさしい
ココピートはヤシの生産物の残さを利用しており、環境に配慮した製品です。
ココピートを使用する上での注意点
ココピートは有機物のため、窒素が入ることでCN比が低くなって発酵が始まり、培地の固さが変わる、保水性が変わる、培地量が低くなるなど、物理性が変化し、やがて堆肥へと変わっていきます。
またココピートは使用する椰子の種類や産地、製造工程、場所(微生物の種類が異なる)によって大きく品質が異なるため、その点を見極める必要があります。製造段階での堆肥レベルがバラバラ(色が黄色だ、茶色、黒色など)だと最初からばらつきが生じます。たとえば黒色のココピートが多い場合は堆肥になる速度が早くなるため、たった1年で物理性が変わり使えなくなるケースもあります。
粒の腐植度(堆肥レベル)が違う粒が混ざっている場合、バッグ内の物理性もバラバラに進んでいく。
参考リンク