環境制御型農業は土壌以外のさまざまな種類の培地を用いて、植物を好みの生育条件に合わせてより健康的に育てる農業です。近年の環境制御型農業の進歩により、水耕栽培、エアロポニックス、NFT、アクアポニックスなど、固体培地を使用しない効果的な栽培技術が開発されています。
代替培地を検討する際にはロックウール(無機岩石)、ピートモス、ウッドチップ、ウッドファイバー(有機天然資源)、ココピート、ココナッツチップ、キューブ(有機・持続可能)など多くの選択肢がありますが、これらに限定されるものではありません。代替培地の選択は通常、固形物(存在するすべての種類の培地を含む)、空気(通常は空隙率として)および水(植物が利用できる水と利用できない水の両方を含む)を望ましい割合にするために、異なる物理および化学特性を有する多成分の構成になります。一般的にパーライト、バーミキュライト、ゼオライト、加熱粘土などの鉱物成分(天然だが工業的に加工されている)が使用されます。また、軽石(天然の火山ガラス)も選択肢のひとつの他、様々な種類のコンポストなどの土壌改良材も考えられます。
栽培用培地を選ぶとき、生産者は使用する培地の種類や配合にも配慮する必要があります。これは、各成分が異なる物理的および化学的特性を有する一方で、他の成分と混合したときに同じ特性を保持できない可能性があるためです。例えば、個々の成分やその特性である空隙率、保水力、陽イオン交換容量、pHなどは、最適な生育に理想的(もしくは適した)な範囲にない場合があり、最適な生育に望ましい特性を得るためには一定の割合で他の成分と混合する必要があります。そうしなければ、個々の原料が持つ本来の特性は維持されず、混合比率の予測されたパターンにも合致しません。
したがって、適切な組み合わせの培地を慎重に選択することで、根域に十分な空気を与え、必要な量の水と適切なバランスの栄養素を植物に容易に供給することができ、植物がストレスなく健康に成長し、より良い収穫を得ることができるのです。
栽培用培地の役割
一般的に栽培用培地の目的は、植物とその根をサポートすることです。さらに培地は植物が根から取り込むのに適切な量の空気/酸素と水を供給できる必要があり、通常それは材料の多孔性によって決まり、材料の密度によって測定されます。 植物が利用できる栄養素の量は保水力によって決まり、保水力は材料の多孔性に関係し、またメディアの陽イオン交換容量(CEC)にも依存しています。それは栄養素を保持し、同時に植物が取り込むのに適切と判断されたときに放出するメディア(材料)の能力です。このようにして、植物が利用可能な栄養素の貯蔵庫が作られます。
空気を含んだ空隙率、保水力
空隙率や保水性は、主に培地の粒径や粒度分布によって決まります。ココピートには細孔があり、マクロ孔(粒子間の隙間)とミクロ孔の両方が全空隙率(空隙の容積率)を構成しています。
重力は、飽和状態 (saturation) から保水容量 (field capacity)までの水の排出を促進します。水が排出されるにつれて細孔または空間は空気で満たされ、。保水容量に関しては細孔間の毛細管力により、水が重力に逆らって細孔に保持されます。水は固体粒子に近づくと粘着力や凝集力によって保持されるようになり、これにより、空気で満たされた空隙率は減少し、利用可能な水ほとんどが植物が利用できない水になります。
空隙率と保水率の関係
粒子のサイズと分布は、栽培用培地に存在する孔のサイズと数を決定します。排水率、ひいては空気を含む空隙率や保水率を決めるのは、孔の大きさなのです。さらに、培地の陽イオン交換容量によって、水からの栄養分の取り込みと植物への栄養分の放出が継続的に行われるようになります。また、培地のpHは、植物が適切に栄養分を取り込めるようにします。
下記の表は、ココカラ製品の配合による三相分布の比較です。
※ココカラ製品の配合比較は、記事の最後の関連記事のリンクからご覧いただけます。
栽培用培地としてのココピート、ユニークな選択肢
一般的には、1種類の素材か、配合が分かっている2種類の素材の組み合わせかを選択することになります。材料の種類の中でも、ロックウールやピートモスなどの大きさや種類を変えて、空気を含む空隙率や保水力などを変えるといった選択肢はありません。 しかし、ココピートは、同じ天然、生分解性、持続可能なココナッツ殻から得られるハスクチップのサイズや形状が異なるものを使用し、混合することでパラメーターを変更することが可能です。そのため、ココピートは非常にユニークな存在です。
一般に、ココピートを栽培用培地として使用する場合、粗粒子と細粒子を適切に混合することが推奨されます。異なる栽培植物や栽培環境や方法に適した空隙率や保水力の望ましい値は、粗いサイズのハスクチップやカットファイバーを異なる粒子のココピートと混合して使用することで容易に達成することができます。また、培地は生育中に構造にダメージを与えることなく取り扱うことが重要であり、構造にダメージを与えると最終的に空隙率や保水力に影響します。
粒度分布、密度パラメータ、必要な培養土の量の最適化:(ノウハウ)
空隙率や保水力に影響を与える他の関連パラメータについても触れておきましょう。バッグやポットの高さ、最適化された粒度と粒度分布、バッグやポットの体積、これらのパラメーターは、バッグやポット内に充填される水と空気の相対量に影響を与えるか、変化させることができます。例えば、重力はバッグやポット全体に均一に下向きに作用しますが、重力ポテンシャルはバッグやポットの高さによって変化します。通常、バッグやポットの高さが2倍になると、重力ポテンシャルは2倍になり、高さが高いと水は早く下に落ちることで、水の分配が上下と不均一になり(上部はドライ、下部や底は水が多い)、バッグやポット内に充填される空気の量も不均等になります(上部の根に空気はあるが水がない、下の根は水に浸かって空気がいない)。「空気があって、水がない」「水があって、空気がない」ではなく、水もあって空気もある場合が一番良いということになります。
この影響を軽減し、根が必要なときに水をバッグやポット全体に均一に行き渡らせるために、タイトネスというパラメータが考慮されます。タイトネスとは、通常よりも多くの培地をバッグやポットに詰め込むことで、粒子同士をより近づけ、孔のスペースと大きさをゆるかに小さくさせることです。大きい孔が小さくなり、水は孔に保持され、毛細管と同じ現象で重力に抗い上に行き、粘着・凝集作用で粒子に付着し、最終的に培地の水は根が吸える水をバッグやポットの中で均一にすることができます。つまり、大きい穴が小さくなることにより、毛細管と同じ現象で下の水が上にいきます。また、下に空気が、上に水がある状態になり、上下の空気と水が良いバランスになります。
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